市場情報と雑学と 〜明日使える知識を〜

某大手電気メーカーに勤める社内SE。マーケティング的なことも業務の中に入ってきているなかで有望な市場分析を発信していきます。また、導入してきたなかで便利な小物があれば紹介していきたいと思います。

この停電がいつまでか 太陽光発電と蓄電で停電を回避する最新の住宅事情

連日の台風で各地が停電で騒がれています。日本の電力事情と家庭に使える再生可能エネルギー太陽光発電家庭用蓄電システムV2Hシステム)をどこよりも詳しく説明します。

 

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1.日本のエネルギー依存事情

1960年代の日本は石油輸入の依存度の高さから原子力発電の導入をすすめてきました。

2011年の東日本大震災による原発事故を背景に脱原発の声が高まりました。

2010年までは8割程度を維持してきたエネルギーの海外依存率は9割を超えています。

今後、電力需要が増えることと原油価格の高騰も背景に新たなエネルギー源として再生可能エネルギーが注目されました。

 

 

2.FIT(固定価格買取制度)とは 

FIT(固定価格買取制度)とは、電力会社が一定の期間、定額で発電した電気を買い取る仕組みです。発電出力規模に応じた価格で電力会社が固定買取を行います。

10kW以上は20年・10kW未満は10年の固定買取制度となっています。

FITで悪化した電力会社の収益は、皆様の電気代明細に記載されている再エネ賦課金で徴収されています

 

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産業用太陽光発電のFIT

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産業用太陽光発電(メガソーラー)はおもに企業が利用する出力1,000kWhの太陽光発電所です。事業者登録ののち、20年間は固定価格で買い取られます。利回り10%超えの商品として投資商品としても注目されています。

 

メガソーラーのメリット

 

20年間固定された売電価格で買取

再生可能エネルギーとして一定の電力を供給できる。

・kWあたりの設置費用が安価(2018 年に設置された 10kW 以上の平均値は 28.6 万円/kW)*2

 

メガソーラーのデメリット

 

・メンテナンスコストがかかる(寿命10年のパワコン・保守人員が必要)

・高圧契約のため、キュービクルなどが必要となってくる。

・災害に弱い。昨今では台風でパネルが飛ぶなど起こっています。

夜間は発電できない(当たり前ですが超重要)

 

家庭用太陽光発電のFIT

 

家庭用太陽光発電のFITは10kW未満の出力の物が多く2009年開始の48円から概ね半額ほどになってきました。産業用と異なり10年の固定買取期間となっています。

これは太陽光パネルの販売費・設置費が年々安くなっており、10年で設備償却ができるよう設定された価格となっています。

家庭用・事業用を含め、今後10年で売電・導入価格は大幅に下がるものと思われます。

民間調査機関のデータによると、日本の太陽光発電の発電コストは 2025 年に 6.2 円/kWh、2030 年に 5.1 円/kWh 程度まで低減することが見通されている。また、別の民間調査機関のデータによると、日本の大規模太陽光発電の発電コストは、2025 年に 6.4 円/kWh、2030年に 5.3 円/kWh 程度まで低減することが見通されている。

経済産業省https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/044_02_00.pdf

2009年FITが終了するユーザーが自家消費に向かう流れ

 

2009年にFITが開始され、2019年に終了する家庭は売電価格が48円→6~8円と大幅に減少します。そのため蓄電池業界ではFIT終了ユーザーが自家消費できるよう様々な製品を販売開始しています。

 

 

3.太陽光発電パネルの価格

 

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見積もり時には施工平均のkW単価と大きく乖離が無いか調べる

大きく下回る場合は設置工事費のほか、メンテナンス費・出張費など別の請求項目で請求してくる業者があるため、総額での見積もりを取り比較してください。

一般的な住宅で使用する太陽光パネルの5.0kWであれば130万前後になると予測されます。(蓄電池やオール電化割引ではなく太陽光単体設置施工の割引価格

2018年度に設置された新築案件の上位25%を分析すると、26.73万円/kW
となっており、昨年度の同じ水準(30.56 万円/kW)よりも大幅に低下し
た。また、「売電価格が家庭用電気料金並み」という価格目標が新築案
件のほぼ半数で達成されている。

経済産業省https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/044_02_00.pdf

太陽光パネル補助金制度

ほとんどの自治体に太陽光・蓄電システムに関する補助金があります。

国全体で使える補助金SIIの下記補助金があります。

2019年度 補助金額最大60万円

「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金

SIIhttps://sii.or.jp/kateichikudenchi31/public.html

要件:太陽光発電(10kW未満)を所持している需要家に対し、家庭用蓄電システムの導入事業に要する経費の一部に対して、当該事業に要する経費を補助する

VPP実証事業において共通実証等に参加する蓄電システムが必要

※VPPについては後日の記事で記載します。

また市町村などの自治体の補助金についてはパナソニック様のページよりまとめられています。合わせて確認すると良いでしょう

https://sumai.panasonic.jp/chikuden/subsidy_info/

停電時の太陽光パネルの動作

シャープ製太陽光パネルの場合、自立運転用コンセントを使用して電気を使用します。

家の中のコンセントは使用できません。

太陽光のみでは停電時に普段と同じ生活を送ろうと考えた場合は停電時のバックアップとしては不十分です。

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出典:https://www.tainavi.com/library/4186/

4.停電時の家庭用蓄電システム

停電時に家の中のコンセントを変えずに電気を使いたい、という場合を想定したものが家庭用蓄電システムです。

FIT終了に伴い売電価格が買取価格を下回ることから自家消費についても注目が集まっています。

家庭用蓄電システムのメーカー

一日で4人家庭が利用する電気量はエアコンも含め平均18.5kWhと言われています。

以前は太陽光のパワコンと蓄電池のパワコンの2種類を設置する必要がありました。

現在は太陽光と蓄電池のパワコンを一体化したハイブリッドパワコンというものが主流となっています。

200V対応のものはIHクッキングヒーター・エコキュート・トイレ温水便座など瞬間的に電力を使用するものに対応しています。

 

ニチコン

家庭用蓄電システムの販売台数日本一(2019年7月時点)の会社です。

一体型システムとなっているため価格がわかりやすく大容量にも対応しています。

製品によっては200V対応もしており可搬型蓄電システムもラインナップしています。

また、後述するV2H充電スタンドを組み合わせたトライブリッドシステムもあります。

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"出典:https://www.nichicon.co.jp/products/ess/"

 ※使用時間は10kWを一日で使用すると仮定して計算しています。

パナソニック

太陽光・住宅事業も行っているメーカーということもあり、既設のHEMSなどに相性が良いです。個人的にはパワコンのデザインがオシャレで室内設置しても違和感が無いのもプラスです。

3.5kWhと5.6kWhの蓄電システムを組み合わせて柔軟なサイズの蓄電容量を確保できます。

機器をすべて2階に設置できるなど、浸水被害にも対応しているのがポイントです。

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”出典:https://sumai.panasonic.jp/chikuden/"

シャープ

既設太陽光のパワコン置き換え需要に対応しており、FIT終了のユーザーとパワコンを買い換えるユーザーに強みがあります。

太陽光・パワコン・蓄電池をユニット単位で購入できます。2019年10月現在、200V 対応が無いのが残念ではあります。なお、一体型との価格比較のため、システム単位での掲載をしています。

低容量帯は割高感がありますが、既設太陽光やHEMSとの連携が必要な場合にはアリと考えます。

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"出典:https://jp.sharp/e_solution/battery/"
※保証は10年無償・15年は有償

家庭用蓄電システムの購入・設置費用

家庭用蓄電システムには設置時には、本体費のほか、工事費もかかります。

蓄電システムにより容量に応じた補助金が出る自治体も多いので確認してみると良いでしょう。

本体費・工事費(設置工事費+電気工事費)

上述メーカーは3社だけですが、概ね100万~400万ほどになります。

地域の工事業者により値段にばらつきはありますが概ね20万~40万ほどが相場となっています。

蓄電システムの補助金について

こちらも太陽光と同様にパナソニック様が補助金情報をまとめられています。導入検討の際はご確認ください。

国の補助金https://sumai.panasonic.jp/chikuden/subsidy/

自治体の補助金:https://sumai.panasonic.jp/chikuden/subsidy_info/info.html

5.蓄電システムの代替として安価なV2Hという選択肢

停電補償のための蓄電システムについて説明してきましたが、設置費用が120万~440万ほどかかってしまいます。そこでより安価に停電対策が可能なV2Hについて説明します。

EVを接続するV2Hとは?

V2Hとは正式にはVehicle To Homeといいます。EV・PHV・FCVから給電する仕組みです。海外も含め自動車メーカーが2020年以降ラインナップを増やす戦略を取っていることから市場としては拡大路線です。

なお、世界で唯一V2Hが商用化されているのは日本だけです。

蓄電システムとの容量を比較すると最大でも16kWの蓄電容量に対し、最大62kWhと4倍弱の容量差があります。

車種 リーフ プリウスPHV アウトランダーPHV
電池容量 40~62kWh 8.8kWh 13.8kWh

V2Hのメーカー・価格・設置価格

現在、V2Hを生産しているメーカーはニチコン三菱電機です。

ニチコン製は38万円から、三菱電機は130万円となります。

工事費は70万から(高い…)になります。ただし蓄電システムを代替すると考えると車両本体+V2Hのほうが安価になるのは間違いないでしょう。

ニチコン製V2H:https://www.nichicon.co.jp/products/v2h/index_top.html

三菱製V2H:http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/smartv2h/

 

補助金については毎年変わりますのでご購入の際は次世代自動車振興センターを確認すると良いでしょう。自治体についてはまとまっているサイトがありませんでしたので各市町村を確認してみると良いでしょう。

次世代自動車振興センター:http://www.cev-pc.or.jp/

 

 

日本では原発が止まり燃料使用費が上がっていることから停電のリスクは小さな自然災害でも起こるようになったと感じます。例年どこかしらの地域で停電は発生しており以前のような大地震のときに備える、といったものでは無くなってきています。

新築時には一度考慮してみると良いでしょう。

 

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